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#2: Shikanoshima Evening - Rehearsal for the 21st Century

寄せては返す 波の音を
目を閉じ聞いていた
髪をくすぐる 潮の香りを
胸に吸い込んだとき
安らぎの色がみえた気がしていた

くるぶしを洗う水さえ構わず歩いた
波打ち際 夕日の色に染まっていくよ
日焼けした子供たち 手を振ってた岸辺に
置き去りの 麦わら帽子がひとつ

(「Shikanoshima Evening」 * Morihiro 2002)


少し疲れた水曜日の夕方、いつもより早く会社を出て、埠頭行きのバスに乗った。
日没の遅いこの街の夏ならば、まだゆっくりできる。満席の花火見物の遊覧船を横目に、僕は乗客もまばらな島への定期便に乗りこんだ。
やがて汽笛とともに、船は志賀島をめざし、博多湾の真中へと乗り出していった。
ほんの5分もすれば、都会の街並みははるかな風景の一部へと溶け、パノラマは地球がまるいってことを僕に実感させてくれる。
行く手にのぞむ志賀島から、水平に目をやれば、大岳、西戸崎、海の中道、和白、香椎、名島、ベイサイド、そして航跡をまたいで、西公園、百道浜、小戸、糸島、能古島、そして湾口の向こうには小さく浮かぶ
玄海島と、いか釣り漁船のいさり火の列が浮かんでいる。
上下に目を移せば、海は一瞬のきらめきを無限に繰り返す波間が、時とともに白から赤へとおだやかに移ろい、天をあおげば、いわし雲の列が灰色から紅へのグラデーションを描いて水平線まで続いている。

世界はとても広いけれど、本当に素敵な場所はほんの少しで、そしてそれは実はいつも考えているよりずっと近くにあるのかもしれない、と潮風に身を任せながら、僕は思っていた。


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