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#1: T.C.R. - Four Seasons in the U.K.

地下鉄のべとつく風をすり抜け
交差点へと駆け上がった瞬間
夕暮れになびくネクタイが
とても気持ちよくて

ヒッタイト、メソポタミア、アナトリア、パレスチナ・・・
今の僕にはもうどうでもいいこと
ツタンカーメンよりロゼッタストーンよりマグナカルタより
今はコードレス電話に夢中なのさ

裏通りさまよう少女よ
そんな切ない瞳で
そんなにきれいな英語で
この異邦人に無心するのはやめておくれ

君がここで今夜のFISH&CHIPSのために恥を捨て
僕がここで印度商人相手の休日勤務に身をやつすこの瞬間にさえ
ロシアでは密輸と汚職で儲けた連中が
KX−F130BXを先を争って求めているのだから

ストリート・ミュージシャンの
ものうげなサキソフォンの調べも
もう僕の心とらえはしない
この街で僕はもう詩人でも学者でもない
誰もが僕をこう呼ぶ 
"Hey, Panasonic Man..."


ロンドン中心部、大英博物館に程近いTottenham Court Road (T.C.R.)は、秋葉原の裏通りの如き、電器製品のジャンク店が肩を寄せあう、エキサイテイングな場所だ。ここに足繁く通い、ライバルメーカーの新製品にチェックを入れ、南アジア、中近東系のちょっとひとくせある店員たちとおしゃべりを交わし、「商品が足りない」と文句をいわれつつも、僕たちの工場で作ったコードレス電話やファクシミリが、驚くようなプレミア付きの値段で売れているのを目の当たりにするのは、それだけで十分わくわくする経験だった。


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