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#2: Osaka Night Serenade - Songs from Panasonic

「幸之助さんよ........」
ロビーの壁に飾られた写真を前に、僕は缶コーヒーをちびちびやりながらためいきをついた。
ここ大阪の片隅にある研修所は、周辺は閑静な住宅街で、夜になればすることもない。まわりは日本全国から集まってきた見知らぬ人ばかり。結局僕は一人の時間をもてあましていた。
一代のうちに小さな町工場を、世界のトップ家電メーカーにのしあげた成功者は、写真の中で、穏やかな面持ちでどこかの日本庭園をのんびり散歩している。しかしそれを見つめる僕のとまどいは深まるばかりたった。
家電の王者、Panasonicは確かに、わずか半世紀にして世界の製造業のスターダムにのしあがった。しかし「創業者」たる彼の没後十年、早くも曲がり角に差しかかって
いる。誰もがそのことには気付いているし、それだからこそ誰もがそれをできれば無視したいと願っている。
表面的な問題は、さまざまな顔をして表れている。バブルの時代には結局金融不祥事と無縁ではいられなかった。社運をかけたはずの米国映会社買収も良い結果をもたらしていない。今後の成長分野であるコンピュータ関連分野ではライバルに大きく遅れを取っている。
より根本的な構造に目を向けるならば、日本の御家芸だった、「低い生産コストを武器にしたものまね大量生産」は、超円高時代を迎えて限界に達しつつある。ものまねの舞台は発展途上国へと移り、一方アメリカでは先端技
術産業の好調に象徴される、「創造力の勝利」がすこしづつ姿を現しつつある。ハイテク分野では決してアメリカに追い付けず、ローテク分野では発展途上国に舞台を奪われてゆき、中間に取り残されたニッポン株式会社は、どこに新たな飛躍への鍵を見いだせばよい
のだろうか。

「幸之助さんよ、どげんすとかね・・・」
何も答えない肖像に向かって一言吐き捨て、僕はロビーをあとにした。

バブル崩壊後の日本経済の本質的な構造変化に、霞ヶ関の官僚たちがまだ気づかずにいて、公共投資の拡大にうつつを抜かしていた頃、僕は産業界の最前線で、いつのまにか変わった風向きをその感性で確かに捉えていた。ただ、あの頃の僕が無力だったのは、その変化に対して、どう立ち向かうべきなのか、会社に対しても、自分自身に対しても、その処方箋を示す力がなかったこと。


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