Morihiro_Logo

Homeへ戻る

<< Page 2/7 >>

Bar

Summer, Watarase Valley



震える 手のひら 広げて笑う
「あの頃 ぼくらは」 が口癖で
「飲むな」と 医者には 言われるけれど
命を 惜しむ歳でもない

足尾の町から 通洞あたり
ひとやま あてると 夢見た道
夕立ち ぬらした 草むらの陰
ものさえ かたらぬ 工場の跡

この山を枯らすことに 手を染めた
彼を今さらせめないけれど
昨日は昨日 今日は今日
そして明日は明日

そして明日は明日



はた織り 教える セピアの写真
嫁入り支度に 磨いた腕
今では 教わる 人もなくて
回らぬ 糸車 泣いている

「シャッターおろして もう10年」と
店先 がらくた 片付けもせず
人影 とだえた 街道筋
日差しに ふりそそぐ せみしぐれ

年老いた彼女に変わることを
強いるつもりはもうないけれど
昨日は昨日 今日は今日
そして明日は明日

そして明日は明日


 休日に、近郊のまちに日帰りの旅に出るのが好きだ。そんなことを毎週のようにやっていたある夏の日のこと、東武沿線に行ってみたくなり、渡瀬渓谷と、北関東のいくつかの街にぶらりといってみた。
 足尾銅山については、小学校の教科書で、田中正造について学んでいたが、詳しくは知らなかった。今回の訪問で、一番許せなかったのは、足尾に行くといろいろ歴史資料館みたいな施設があるんだけれど、銅山開発を栄光の産業史として描くだけで、公害のことや、銅山がすたれてからどれだけこの地域が立ち直れずにいるかという負の側面についてほおかむりをしていることだった。地元の元銅山会社が経営している資料館だからそうなるんだろうけれど、過去の栄光ばかりを見つめて、今の現実を直視して未来を目指すことから逃げている姿勢としか思えない、まさに、現代の日本での地方の疲弊の根っこにある問題を見せつけられて、僕はどうしようもなく腹立たしくて仕方なかった。
 なので、この曲は、最初はそうした甘えを糾弾してやる!というくらいのつもりで書きはじめたのだけれど、完成してみたら、結局僕は歯切れが悪くて、そうした現実を客観的に歌うほうを選んでしまった。以前つくった、「Ghost Town Factory」の時と同じく、現状を徹底的に糾弾したい気持ちはあるが、「じゃあ悪いのは誰だ!」と自分の中でつきつめて行く中で、結局、誰のせいにもできなかったんだ。


<< Page 2/7 >>

Homeへ戻る